関節リウマチ患者さんのワクチン接種
- 2023年10月18日
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秋気さわやかな季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
ふくだ整形外科リウマチクリニック院長の福田康治です。
第1回目の『リウマチの部屋』では関節リウマチ患者さんのワクチン接種についてお話していこうと思います。
関節リウマチの治療には、メトトレキサートを中心に、生物学的製剤、JAK阻害薬などの免疫抑制薬、ステロイドなどが使用されています。免疫抑制薬を使用している患者さんのワクチン接種については、ワクチンの種類や患者さんの背景により、対応が異なります。
不活化ワクチン:不活化ワクチンは感染力をなくした病原体や、病原体を構成するタンパク質から作られています。免疫抑制薬やステロイドを使用中の患者さんも接種可能です。免疫抑制薬による治療をうけている、特に高齢の関節リウマチ患者さんは感染症のリスクが高く、下記2つのワクチンについては接種が強く推奨されています。
”季節性インフルエンザワクチン”は、免疫抑制薬による治療を受けている患者さんにおいて毎年の積極的な接種が推奨されています1)。
高齢者の”肺炎球菌ワクチン”は、免疫抑制薬による治療を受けている患者さんにおいて接種スケジュールに従って定期的に接種することが推奨されています1)。
弱毒生ワクチン:生ワクチンは病原性を弱めた病原体からできています。免疫抑制薬を使用中の場合に生ワクチン接種はできません。
生物学的製剤を使用中の患者さんが生ワクチン接種を行う場合、3~6か月の休薬期間が求められています2)。治療期間中の3~6か月の免疫抑制薬の休薬は現実的には難しいため、生ワクチン接種が必要である患者さんは免疫抑制薬の治療開始前にワクチン接種を検討することが必要です。またフランスでは生ワクチン接種後3~4週間(少なくとも2週間)の生物学的製剤の休薬が推奨されています2)。メトトレキサートの休薬については議論が分かれています。ステロイドは投与量10mg/日以上、投与期間2週間以上であれば、生ワクチン接種前に1か月間の休薬が推奨されます2)。
帯状疱疹に対するワクチンとしては、従来から生ワクチンが用いられてきましたが、2020年より通常50歳以上の患者さんにおいて不活化ワクチンが接種できるようになっています。帯状疱疹ワクチン接種の際には、生ワクチンと不活化ワクチンの違いにご注意ください。
関節リウマチの妊婦さんのワクチン接種:
インフルエンザワクチンは、妊娠中も毎年定期的な接種が推奨されています。
生ワクチンは妊娠中に接種してはいけません。また生ワクチンの接種前1か月間から接種後2か月間は避妊が必要です。妊娠前に、風疹や麻疹などの胎児に影響をおよぼす可能性のある感染症に対する免疫を持っているか調べておき、必要なワクチンは妊娠前に接種を検討します。しかし、関節リウマチ患者さんの場合には免疫抑制薬などの休薬が必要であるため、関節リウマチの病状などを考慮し、主治医とよく相談して接種について決定することが必要です。
妊娠中期以降に生物学的製剤を使用した妊婦さんから出生した新生児については、出生後の生ワクチンの接種は、生後6か月間控えることが求められています1)。
【文献】
1)Furer V, et al. Ann Rheum Dis. 2020;79:39-52.
2)Morel J, et al. Joint Bone Spine. 2016;83:135-41.
季節性インフルエンザワクチンについては、免疫抑制薬による治療を受けている関節リウマチ患者さんにおいて毎年の積極的な接種が推奨されています。当院でも10/16よりインフルエンザワクチン接種を開始しました。ご希望の方は、お電話(078-855-2985)または受付でご予約をお願い申し上げます。
秋冷が日増しに加わってまいります。ご自愛専一にてお願い申し上げます。